2024.3.1

赤字財政の恩恵  ---嵩上げされている日本経済---

名古屋大学  客員教授  経済学博士  

 

国会の予算審議が山を越えてきた。

国の予算が決まらないと、政策が実施できない。予算は細部に至るまで国会で決めることになっている。一見して予算とは関係がないように見えても、いろいろな面から関係づけることができる。したがって審議は広範囲になり、日にちを費やすことになる。

決めるべきことは多い。必要な施策が次々に出てくる。治山治水から道路や橋のような公共施設の建築並びに保守補強等充実しなければならない問題は多い。一方では国民の生活に密接な影響がる福祉や医療介護なども重要である。国民の身近な問題を取り上げて予算に盛り込むことを政治家が考えることは好ましいことである。それらに対する要望は段々と増加していく。国民がより良い生活を望み、それを実現するためには自然の方向である。

必要な資金は税金で充てることになるが、税の負担を誰もが避けたがる。国民が嫌がることを阻止するのが政治家の役割と考えられている。長年にわたり禁句となっていた借金による不足する資金の充足が始まった。一旦この方向が始まると元へ戻すことが難しい。国民のより多くの要望に応えるためには借金を増やせばよい。借金の額が段々と膨れ上がっていく。

実際にわが国の財政赤字は年々増加して、現在莫大な額になっている。しかし、この点の問題が採りあげられて、是正するべきであるとの本格的な議論を国会で聞くことはないのではなかろうか。

それは、国がこれほどの多量の謝金をしても直接問題にならないからである。むしろ現在の最大の経済問題であるデフレ脱却のためには国が大量に借金することが好ましいからである。もしも借金を減らせばデフレはより深刻になるからである。

目先の問題に対処するために始めた赤字財政の結果として、国の借金は年々大きく増え続け、莫大な金額になっている。それが長期的には大問題であることは、誰もが分かっているであろう。

ところが一旦身についた借金による繁栄を手放すことは極めて難しい。借金による安楽な生活を手放すことができないからである。長時間にわたり無理して働く必要がなく、毎日の享楽的な活に明け暮れることができれば、こよなく幸せであるためである。

結果として経済力が衰退していくであろう。それが現実の経済破綻として実現するまでにはには、まだ十年以上もかかるであろう。だから続けたいとの考え方があるが、その後の衰亡の道から逃れることができないことを知ろうとしないのは大問題である。

 

---電通総研ISIDフェアネスへの寄稿(2024.3.1) 255から---

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