2023.9.1

災害復旧と防災と備え

―――準備には大増税が必要―――

               名古屋大学  客員教授  経済学博士  

 最近の災害は規模が大きくなってきたように思われる。対応に当事者が懸命なことは当然であるが、規模が大きいだけに地域は勿論のこと、国が支援をする必要がある。

この傾向は今後も続くのであろう。今まで以上に事前の十分な準備が必要である。現実に大災害が起きると、当面の救済だけではなく、復旧に膨大な労力と資金が必要になる。その準備が十分にできている人もいるかもしれない。しかし現実の大災害は個人の努力では対応ができない。そのために市区町村で対策を立て準備をする必要がある。より大きな規模で、対応が要請される国の場合には、さらに大規模な対応が必要である。

 大災害の対応として治山治水が重要であることは言うまでもない。公共の施設である道路、橋梁さらには上下水道などの点検、維持、補修、補強の必要なことは分かっているであろう。それにもかかわらず資金難から先送りになっていることが多いようである。遅れを取り戻すとともに、将来に向かって災害対策としてのより十分な準備が必要である。

それには相当な資金を積み立てなければならない。その資金は国民が税金として拠出する以外にない。ところが増税には誰もが反対である。それが分かっているだけに、本腰を入れて防災の準備を主張する人がいない。政治家は勿論のことテレビや新聞、雑誌などの報道機関も同様である。

 しかし現実には相当な額の準備が必要であり、そのための増税額は多額である。大増税によって個人は使うことのできる金額が減り、全体の消費が落ち込むことになるであろう。企業からの増税で企業活動は低下し、全体の景気を引き下げる。このようにして景気が大きく落ち込むことは避けられない。

それが分かっているだけに、経済全体のことを考えても増税に賛成する意見は出て来ない。しかし、いずれは正常な状態に戻さなければならない。その時に備えて個人も企業も対応を考える必要がある。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿 249(2023.9.1)から---

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