2023.8.1

強大な日本の経済力

―――経済力の維持は極めて困難―――

               名古屋大学  客員教授   経済学博士  

 日頃いろいろと身近な問題に悩んでいる中で国民は少しでもより幸せをと願っている。テレビ新聞雑誌が国民の悩みや問題を競って探り出し、政府に対応を迫っている。暗い話題に囲まれて、われわれは不幸であり、日本は情けない国になってしまったと思われるかもしれない。

 現実には日本ほど恵まれた国はない。モノが豊富に溢れている。スーパーマーケットでは立派な品がそろっていて、欲しい物を簡単に買うことができる。この状況が何十年も続いているために、それが普通であり当然であって、特に幸せであると感じることはない。

 普通の国では品物が乏しく欲しいものが簡単に手に入らない。皆が欲しがるためにモノが値上がりする。インフレに悩む国が多い。物価の上昇が年間で100%を超える国もある。いわゆる先進国の欧米の主要国でも消費者物価は5%や6%を超え、国際収支が悪化していて、中央銀行が金利を引き上げ続けている。

 経済力の源はモノを創り出す力である。豊かになるために各国ともモノ作りに懸命である。しかし、それは簡単なことではない。長年にわたり国民が向上心を持って懸命に働き続けなければならないからである。

わが国でも78年前には最貧国並みにモノがなく、国民は飢えと戦う毎日であった。その後、諸先輩の懸命な努力の結果として、世界でも抜群の生産力を誇り今日の豊な日本を作り上げたのである。

長年にわたり蓄積してきた対外純資産は世界最大で、国民が遊び惚けていても5年や10年でなくなる額ではない。今後も全国民が長く豊かな生活を満喫することができる。

ただし、それは永遠ではない。国民が勤勉に努力する習慣を無くすと、再び勤勉性を取り戻すことが極めて難しいからである。国の経済力が低下を続け、やがては普通の国になり、さらに低落を続けることが予想される。

そのような先々のことを心配する人は少ない。しかし、そのような長期的な下降傾向はすでに始まっている。それが国際収支の黒字幅の縮小に現れており、やがては消費者物価の上昇を通じて国民生活に影響すると考えられる。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2023.8.1248から---

 

inserted by FC2 system