2023.7.1

国債発行による現在の幸福と将来の大問題

―――覚悟を決めて準備をする必要―――

          名古屋大学  客員教授  経済学博士  

 より豊かになることを誰もが望んでいる。そのため通常は努力を重ね、貴重な自分の資金を使わなければならない。それを政府が無償でやってくれれば、誰もが歓迎する。国民の要望を汲み上げるために政治家達が活躍する。

 政府に資金があるわけではない。必要な資金は原則として税金で確保しなければならない。しかし増税には誰もが反対する。そのために政府の支出を大きく増やすことは難しい。

 解決の方法として借金がある。大災害の対策など緊急の場合には不可欠である。しかし、わが国の政府は国民の要望に沿うために長年にわたり国債を発行して多くの資金を調達してきた。

 一度その路線が定着すると、国民にとっては自分達の負担がなくて豊かさを手にすることができるために、より多くの要望が出てくる。それを政治家が競って採り上げるようになる。財源が不足するために増税が必要であると主張する政治家は爪はじきされる。結果として国の財政赤字は増加し、国債の残高は急増を続けている。

 その重い負担は将来の国民が背負わなければならない。分かっていても誰も真剣に採り上げようとしない。今さら言い出しても実現できないことを知っているからかもしれない。

 膨大な財政赤字を失くすためには大増税が必要である。長年にわたって積み上げた莫大な国債を返済するためには、さらに増税額を上積みしなければならない。それを実行すれば、景気は急落する。大恐慌になるであろう。それが分かっているだけに、だれも本気になって言い出さない。

 幸か不幸か、莫大な政府の国債発行ができる状況はまだまだ続くと考えられる。それだからこそ今後の何年かは、この傾向を続けても問題が表面化しないと思われる。

その間は、この状況が異常であるとの認識が出て来ない。むしろ、これが正常であり、今後も続けられると思われるのではなかろうか。

 将来の状況を素直に予想し、対応するために急いで準備をすることが必要と思われる。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2023.7.1) 247から---

inserted by FC2 system