2023.5.1

各国の背比べ―――経済体質の悪化度

---体質の改善で低下する経済水準---

        名古屋大学  客員教授  経済学博士  

 長年にわたり世界経済は高い経済成長を続けてきた。そこには各国民の絶えざる努力があったことは当然である。それと共に先進諸国が財政政策によって景気を押し上げ続けてきたおかげでもある。

どの国でも国民は景気が良くなることを望んでいる。それを実現するために赤字財政が利用される。赤字が好ましくないことは誰もが知っている。赤字分だけ保有する資金が減っていくため、いつまでも赤字を続けることはできない。その限界は経済力次第である。

貧乏人は持っている資金が少ないために、少し赤字になれば、資金が底を突き、後は収入分しか使えない。すなわち赤字の限界がすぐに来る。これに対して、大金持は保有する大量の資金を吐き出していけば大きな赤字を何年も出し続けることができる。膨大な資産もあるであろう。それを売れば、さらに長く赤字を出し続けることができる。大金持は不足する資金を借りることもできる。返済に心配しなくても良いために、いくらでも資金を借りることができるためである。

政府が景気よく資金を使えば関係者が喜ぶだけではない。全体の景気が良くなる。その結果として、かつての大金持国が大きな借金を抱えるようになると、やがては限界を迎える。現実には、そのようになる前に、大量の資金不足が明らかになり、方向の転換が必要になる。赤字を縮小して黒字を目指し、資金の流出を縮小するとともに、収入の増加に努める必要が出てくる。政府が赤字を縮小すると全体の景気が悪化する。国の経済水準が低下する。

 金持国と見られてきた多くの先進国で赤字が続いている。そして限界を迎えつつある。その自覚がある国もあれば、依然として素知らぬ顔をして大きな赤字を出し続けている国もある。

しかし、世界中が各国の大きな財政赤字に注目するようになると、赤字によって押し上げられてきた世界の景気が反転し、その後は長く悪化を続けることになろう。その中で、どの国が酷いかの背比べになると思われる。極端に酷いわが国の場合、悪化する世界景気の中での体質の改善は大変な事態になる恐れがある。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2023.5.1) 245から---

 

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