2023.3.1
中・米2大国の影響が心配
―――2大貿易国の推移が要注意―――
名古屋大学
客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
わが国の輸出入・貿易の4割を占める中国とアメリカの動向が心配である。
諸外国で景気が落ち込めば、わが国の輸出が減退し、重要な輸出産業が打撃を受け日本全体の景気が落ち込むことになる。海外の経済活動が順調でなければ日本経済にとって必要な部品の輸入ができなくなり、国内の生産活動に支障が生じ、それによる悪影響が考えられる。
急拡大を続けた中国経済はコロナウイルス騒動の後、徹底した感染予防策を続けたため社会活動が滞り国民の不満が高まって不安定な状況が起きている。それが収まるかどうかが心配である。もしも政治不安が高まって国内で統制が取れなくなると大波乱になることすら考えられるからである。そこまでは行かないとしても全世界への影響は大きくなるであろう。中国問題のわが国への直接間接の影響は計り知れない。
世界最大の経済大国であるアメリカも安泰とは言えない。長年にわたり世界中から膨大な輸入を続けてくれたお陰で中国を始め世界中が潤ってきた。アメリカは膨大な貿易赤字を出し続けてきているのであり、それが何時までも続くと考えることには無理があるはずである。世界最大の莫大な借金国アメリカが借金の増加を止めるためには輸入を大幅に削減しなければならない。世界各国のアメリカ向けの輸出が急減することになる。それが世界経済全体に壊滅的な打撃になることは言うまでもない。この要因が何時現れるかの問題である。
世界中にはウクライナ問題など大きな問題が山積している。それらの中には収束して復興景気をもたらすことも考えられる。しかし一度ひびが入った世界貿易の効率的な仕組みが元へ戻ることは難しいであろう。
世界の経済が大きく変わりつつあることを認識し、わが国の将来にわたる長い発展を考えて、産業経済の仕組みを作り直していく必要がある。
---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿 第243回 (2023.3.1)から---