2023.2.1                          

防衛費増額で「増税」は激流の兆しか

―――潮流は変化するか?‥‥―――

             名古屋大学  客員教授  経済学博士  

 岸田総理大臣は防衛費の増額の財源に増税を明言した。

 政治家にとって増税は反対のはずである。国民が増税に大反対であるためである。誰でも減税を望んでおり、増税には反対である。その意向に逆らって増税を打ち出したり実施した政治家は周りから指弾されて総理大臣の地位を追われ、政治家は選挙で敗退して政治家としての生命を絶たれるのが過去の現実である。

 岸田首相がそれらを十二分に承知しながら、このたび「増税」を訴えたのは相当な覚悟の上であろう。総理大臣として止むにやまれぬ思いがあったはずである。「後世に負債を残して苦労をさせるべきではない」「我々が来世代への責任として対応するべきである」と言明した。

 当然のように与野党から非難の大騒ぎである。増税を容認すれば、選挙で反対候補から攻撃の的になり、敗退して落選することは間違いないと思われているからである。

 過去における、このような経験を経ている結果として現在のわが国の財政がどれほど悲惨な破綻になっているかを明言し、是正を図ろうとする見解を目にすることはほとんどない。その中にあって日本の総理大臣としてやむにやまれる思いで踏み込んだ発言である。もちろん大反対を覚悟のはずである。しかし簡単に引き下がるわけにはいかない。もしこれを実現できず、従来と同様に国債の増額で賄うことになれば、国債の残高は今まで以上に激増し、将来世代に破滅的な悲惨さをもたらすことになるからである。それを回避するためには、われわれが増税によって負担する以外にない。不退転の決意での発言であり、その実現のためには決して総理の職責を手放すことがないであろう。

 財源を国債発行による方法が常態化し、この流れに歯止めを掛けなければならない。さらに言えば。これまで発行してきた膨大な国債を減らしていかなければならない。それは簡単にできる額ではない。大量の借金であるために削減計画は長期間を要する。それは長期に渡る経済水準の下落無しでは実現できない。国民の生活水準は急落を続けるであろう。その第一歩になるかもしれない。その覚悟を我々に迫るものであるはずである。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWeb への寄稿 242(2023.2.1)から---

 

 

 

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