2022.7.1
施設の老朽化
―――対応に大増税と景気悪化は不可避―――
名古屋大学 客員教授 経済学博士 水 谷 研 治
愛知県で起きた大規模な水漏れ事故は工業や農業に甚大な影響を及ぼすことになった。貯水池の老朽化による水漏れが原因と言うことである。
すべての施設は完成と同時に老朽化が始まり、将来に備える必要がある。点検と補修に手抜きは許されない。その代償は高いものにつく。分かっていても、つい先送りになって後で悔やむことになりがちである。
最も重要な公共施設が特に問題である。それは問題を先送りしても目先的には支障がないためである。点検や補修のためには人手と費用が掛かる。それを節約したくなるからである。
問題が全国に多く存在するのではなかろうか。治山治水から鉄橋、鉄道、道路、水道、電気等対象は多い。対応するためには多くの意欲的な技術者が必要であり、技術を受け継ぎ磨いていかなければならない。維持補修に資金を惜しむことはできない。そのための資金を潤沢に準備しておくことは当然である
現実にはそのために必要な資金が豊富にあるとは思われない。国の財政が大幅な赤字であり、余裕資金が全くないからである。
その結末は我々だけではなく、子々孫々にわたって深刻な影響を及ぼす。洪水や渇水に悩まされ、鉄橋や道路が使えなくなり、停電が増えるといった社会生活の最低限が頼りにならなくなるからである。諸先輩が長年にわたって作り上げた素晴らしい社会資本施設が老朽化して使えなくなることが、どれほど国民生活に甚大な影響を及ぼすかを想像すると恐ろしくなる。
即刻、方針を転換して将来のことを考えるべきである。そのためには、おろそかにしている公共施設の保守改善のために、われわれが大きな負担をすることは当然である。そのためには大増税が避けられない。それが景気を大幅に引き下げる。景気は加速度を付けて下降し、底が見えない事態になることが予想される。それは長年にわたり、われわれが問題を先送りしてきたためである。
いつまでも今のままの状態を続けていることはできない。改革のための一大決心が必要である。当然、その結果への準備を急がねばならない。
---ISIDフェアネス-パーフェクトへの寄稿第235回(2022.7.1)から---