2022.3.1
インフレ傾向の世界主要国
―――世界経済は転換点へ―――
名古屋大学 客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
新型コロナウイルスの力は偉大である。長年にわたり定着していたデフレ経済をインフレ経済へと転換させつつある。もちろん、それ以外の要因、原燃料価格の上昇なども影響しているが、それも新型コロナウイルスと無関係とは言えない。
新型コロナウイルスの感染を阻止するために各国で人々の交流を制限したことが人々の消費を減退させて不況要因となった。その一方で生産活動や流通面の制約となって国際的な分業体制が支障をきたし、その影響が広がっている。経済活動に支障をきたし、モノ不足から価格の上昇が目立ってきた。
アメリカやヨーロッパの主要国において物価が上昇してきている。企業物価だけではなく消費者物価も上昇し、国民生活に影響が及んでいる。消費者物価の上昇率が小さいわが国とは異なり、インフレの足音が徐々に高まりそうである。
そのため各国とも金融政策の転換を始めている。新型コロナウイルスの影響から経済活動が低下して苦境に陥った企業や人々を救済するために思い切って金融を緩和してきた方針の転換である。
一度ひびが入った生産体制を再構築することは簡単ではない。相当の期間が掛かるであろう。その間、世界的に物価は上昇を続ける可能性がある。
わが国では全体としてデフレ傾向が続いているものの、輸入原材料をはじめとして世界的な物価上昇の影響を回避することは難しい。それが消費者物価にも及ぶことが心配である。国民生活に影響してくると政策を転換せざるを得ない。諸外国と同様にインフレ抑制政策として金融政策の転換が考えられる。
長年にわたり日銀が膨大な資金を供給してきた方向の変更となる。それが直ちに功を奏するとは考えられない。膨大な資金の余剰があるためである。しかし金融市場には影響するであろう。それが景気を抑制する要因になる。その程度は欧米の先進国に比べれば小さいと思われる。しかし世界の経済が縮小すると、わが国の輸出入を通じて国内の経済が影響を受けることは避けられない。
---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2022.3.1)から---