202211

日本経済、新年の課題 ―――経済体質の大改革への準備を―――

名古屋大学 客員教授  経済学博士  

 事業構想大学院大学名古屋同窓会の発足を心からお慶び申し上げます

1 景気を押し上げる2大要因

 新年が希望に満ちた明るい年になるように誰もが願っている。

2年間にわたり新型コロナウイルスの影響で下降していた景気は,その影響を克服することで元の水準へ向かって上昇するであろう。弾みがついて上昇機運がさらに盛り上がることが期待されている。

昨年の衆議院選挙に続いて今年は参議院選挙がある。生き残りをかけて政治家は懸命である。選挙民に利益になる約束が飛び交う。国民の一人一人が利益になることが公言され、大盤振る舞いになる一方で、そのための財源である増税は禁句とされる。選挙が終わると公約の履行が求められる。その結果、財政面から膨大な資金が放出されて景気が刺激されるであろう。財源として増税すれば効果が相殺されるが、それは封印される。おかげで新年の景気は大きく押し上げられると考えられる。

2 景気を抑える経済政策の転換

一方では景気を抑える要因が待っている。

新型コロナウイルスの罹患は国や地域によって大きな違いがあり被害にも差がある。わが国の罹患者数は少ないがヨーロッパやアメリカの影響は甚大である。被害を救済するため各国政府は懸命に対処してきた。そのおかげで、この程度の影響にとどまっているとも言えよう。

被害は全世界に広がっており、各地で経済活動が支障をきたしている。その影響は国際分業体制を直撃し、必要な部品の供給が円滑にいかなくなってきた。供給不足が広がって品不足から企業段階の物価が上がってきている。わが国は例外であるが消費者物価も上がる国が増えてきた。それが放置できない状況になりつつあり景気を刺激してきた政策の転換が迫られている。

金融政策の転換が予想される。コロナ禍の対策として各国で膨大な資金供給が行われ、金利水準は異常に低下してきた。しかし物価が上昇してくると中央銀行としては方向を転換せざるを得ない。

各国とも膨大な国債を発行して財政資金を投入してきた。それが支障なく実行できるわが国は例外である。多くの国では赤字財政に耐えられなくなっており、財政赤字の縮小からさらには黒字化を迫られている。

これらの方向転換は景気を抑制するため各国とも慎重である。しかし避けられない方向であり、世界的な景気抑制要因になる。

3 必要な長期的課題への挑戦

わが国の場合にはコロナ騒動のはるか以前からデフレ対策として大規模な金融緩和策と大幅な赤字財政政策が続けられてきた。その結果、将来の国民の負担は莫大なものになる。大至急で方向の転換を断行しなければならない。その結果、経済水準は大きく下落する。それを覚悟して長期的な観点で大改革を検討する必要がある。

国民の一人一人、すべての企業が相当な覚悟と準備を迫られている。

 

---事業構想大学院大学名古屋同窓会会報第1号への特別寄稿(2022.1.1)から---

MPD名古屋コンパス 同窓会 会報 NO 1

 

 

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