2021.12.1

新型コロナに明け暮れた1

―――経済の後遺症に要注意―――

              名古屋大学  客員教授     経済学博士    

 新型コロナウイルスについては依然として分からないことが多い。その中を手探りで対応し、右往左往した1年であった。過去の事例や諸外国の状況を参考にして対応をしてきたものの、的外れのこともあった。原因はいろいろなことが考えられるが、諸外国に比べ、わが国の罹患者や死者は極めて少なかった。やむを得なかったことではあるが、特にヨーロッパやアメリカの感染拡大状況を参考にして過剰な対応がなされ、異常な萎縮になったようにも思われる。

 特に飲食業や旅行関係などのサービス業は壊滅的な影響を受けている。その割には倒産などが増えていないのは政府による救済策の効果によるところが大きいように思われる。予想を超えた緊急事態であり、思い切った政府の救済策が役立った。お陰で全体の経済が大きく落ち込むことを防げたように考えられる。

ところが新型コロナウイルスの影響は全世界に及んでおり、その結果、経済社会の活動が制約を受けている。その影響は深刻であり、世界的な交流による効率的な分業体制に支障が出てきた。長年にわたる国際化の努力の結果として成立してきた精緻な生産流通体制が機能しなくなると経済活動は多方面にわたり支障をきたす。

コロナ禍が収まるに連れて経済活動の復旧が期待されている。旅行や会合の回避によって抑えられていた個人の消費が元へ戻るだけではなく、貯まった資金がさらに消費を押し上げるであろう。異常に落ち込んだ分だけ需要が高まり、それを梃子に景気が上昇することが理想である。

 しかしながら一方では大きな課題が残されている。緊急対策として大量の資金が支出された結果、国の財政赤字は莫大となり、借金は想像を絶する金額になってしまった。これが将来の国民にとって大きな負担になる。

 それは世界各国の共通した課題であるが、世界中で突出した国債残高となっているわが国の場合、それが何十年にわたり経済を制約する要因になる。景気が簡単に回復すると見ることは難しいのではなかろうか。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2021.12.1)から---

 

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