2021.11.1

選挙公約が目先の景気にはプラス

―――財政赤字はさらに拡大へ――

        名古屋大学  客員教授    経済学博士 

 選挙は政治家にとって生きるか死ぬかの戦争である。有権者を引き付けるための選挙公約は重要である。

人々の関心は多種多様であるが共通するものとして懐具合がある。より豊かになりたいとの思いである。収入が増え、経費が減ることが基本である。それを実現するために支援金や補助金があり減税がある。民間への支出が増えれば、それが使われて景気が上昇する。減税によって使える分が増えると支出が増えて全体の景気が良くなる。増税は逆である。

選挙の度ごとに各種の公約が乱れ飛ぶ。そのような皆に都合の良い方法があるはずはない。分かっているにもかかわらず、選挙が終わると、それらの公約を守ることを皆が請求する。政治家も懸命に公約を守ろうとする。

収入を減らして支出を増やすことはできないと考えるのが普通である。しかし借金をすれば可能である。それが打ち出の小槌として政治に利用されてきた。

財政支出が抑えられない。増税が必要であるが、それを見送ってきた。時に蛮勇を振るって増税しても極めてわずかで赤字の解消とは程遠い。毎年赤字を続け、赤字幅が増大する始末である。

そのような大幅な財政赤字を出しても問題が起きない源はわが国の経済力であり供給余力である。膨大な供給力はデフレ要因であり、それが財政赤字によって削減されている。現在の景気は膨大な財政赤字によって下支えされているのである。本来は財政赤字を失くす必要がある。その場合には景気の落込みは激烈なものになる。

幸いにして政治家はそのような国民が嫌がる大増税などの赤字削減を今後とも先送りすると考えられる。逆に国民の人気取りのため財政支出を増やす一方で増税を先送りするであろう。お陰で今後の景気は大幅な財政赤字によって引き続き下支えされると思われる。できればさらに財政赤字を大きくして景気を引き上げたいと願うかもしれない。しかし、すでに極端な赤字となっているだけに、それをさらに増大することは難しいと考えられる。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿2272021.11.1)から---

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