2021.10.1

貯蓄のし過ぎ?

―――将来への積極的な投資が重要――

      名古屋大学  客員教授   経済学博士  

 景気が思わしくない。売り上げが冴えないからである。資金が有るにもかかわらず、それを貯め込むばかりで使わなければ経済は回っていかない。

人々が消費を増やし、企業が投資を盛んにすれば、ものが売れて景気が良くなり、企業は儲かり、人々の収入も増えて良い循環が始まる。ところが現実には先行きが不安であり、人々は資金が有っても貯め込むばかりで使おうとしない。企業は儲かっているにもかかわらず、それを活用しようとしない。

方向を転換しようとして多くの示唆が行われてきている。人々に旅行を勧めるのも一つである。企業に対しては、もっと従業員への給料を上げ、株主への配当も増やすべきであると言われる。もちろん一番重要なのは投資を活発にすることである。多くの企業が資金を貯め込まずに投資に使えば、全体の景気を引き上げることになる。それが多くの企業の売り上げを増やして良い循環が生まれ全体の景気が良くなる。

 いくら言われても人々は無駄遣いをしない。将来のことを考えれば、自分のことは自分で責任を持たなければならないからである。そのために必要な貯蓄は相当な金額になり、余裕のある人は少ないであろう。

 企業の経営者は将来のことを考えている。変転極まりない中で荒波を乗り切って安全を確保するためには資金の留保が欠かせない。変動する経済の中で現在の業務が何時までも安泰であるわけがない。小刻みに、あるいは大胆に大きく進展させなければ生き残れない。そのためには思い切った投資が不可欠であり、相当な資金が必要である。それは設備投資ばかりではない。新規事業への投資はいつでも必要である。社員教育をはじめとした人材への投資も重要である。

 もちろん人も企業も無駄に使うべきではない。そのような習慣が身に付けば、将来の安定が損なわれる。重要なことは将来のために行う積極的な投資である。それが個人でも企業にとっても国全体としても将来の発展と繁栄につながると考えられるからである。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2021.10.1)から---

 

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