2021.9.1

防災に必要な負担

―――目先重視が長期的な問題に――

      名古屋大学  客員教授     経済学博士  

 大災害のたびごとに悲惨な状況が報道され予防措置が強調される。対象となるのは治山治水だけではない。道路や鉄道などの交通施設や電気ガス水道など基本的な社会資本の見直しが必要である。建設後、長年経過している施設が増えていくため今後ますます重要になる。

 地球温暖化のためかどうかは分からないが、災害の規模が大きく回数も増えていきそうな気配である。それが予想される以上、先回りして対策を講じるべきである。それが将来の国民がより安全に暮らす基本となる。

 幸いにも鉄鋼やセメント並びに土木建設関係の資材も整っている。少子高齢化が進むとは言え、まだまだ人力も動員できる。早急に取り掛かる必要がある。

 分かっているものの現実には対応が遅れている。理由は国や地方公共団体の資金不足である。抜本的な大工事のためには相当な資金が必要である。現実には乏しい資金をやり繰りして充当しているため、必要な目先の緊急工事を優先せざるを得ない。そのために大規模な工事が後送りになる状況が続いている。

 国の将来に必要な資金は国民が税金として拠出する以外にない。ところが、増税となると反対する向きが増える。それを政治家が煽る。民意を汲まなければ選挙で当選することができないとなれば、それに迎合するのは自然の勢いと言うべきかもしれない。

基本は国民の考え方である。一人一人が目先の自分の利益を優先するならば、だれも将来の国民のことを考えようとしなくなる。その結果は将来の子孫の運命に反映し、日本がより住みにくい国になってしまう。その反対でなければならない。

将来、より安全で豊かに暮らすことができる国を造ることを目指す以上、相応の負担が避けられない。それに伴い一旦は大きく経済水準は低下するであろう。それを十分に認識したうえで、その場合に備えていくことが企業にも個人にも必要である。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2021.9.1)から---

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