2021.8.1

どん底から大躍進した日本経済の実績

―――改革に伴う景気の悪化を恐れ過ぎ―――

          名古屋大学 客員教授 経済学博士  

 先の大戦争では死力を尽くした末の敗北であり、75年前の日本は壊滅状態であった。石油をはじめあらゆる原料や材料を使い尽くしていた。鉄もアルミも木材も繊維もなくなっていた。工場はアメリカ軍の空襲で破壊され、機械も道具も残っていなかった。都市は焼夷弾で焼き払われて住む家がなく、着るものがなく、食べるものがなかった。

 何もないところからは何も生み出せない。国民は毎日を生き延びるのに懸命で将来のために考える余裕がなかった。このような悲惨な状況が永遠に続くと思わざるを得なかった。

 現実は違っていた。無我夢中の悪戦苦闘の末10年間で戦前の水準へと戻ることができた。奇跡の復活であった。敗戦の時点では到底想像ができなかったことである。

しかし経済力の素地があるところへ復興景気が経済の急激な拡大をもたらしたとも考えられた。戦後の復興時代は終わり、日本経済の成長は鈍化すると思われた。ところが日本経済は一服することなく、引き続き高い経済成長を続けた。

この間にもたびたび危機が訪れている。そのたびごとに、もはやこれまでと言われたものの、大きな課題を克服して経済成長を続け世界第2の経済大国になったのである。その後も経済拡大を続け一人当たりの国内総生産はアメリカを追い抜き、世界最高の北欧の国に迫った。

高い経済成長は半世紀近くになり、その後も成長が続くと思われていた。まさか日本経済の成長率がマイナスになるとは想像できなかった。

日本経済が成長しなくなって30年も経つ。この間、政府は懸命に景気振興策を取り続けてきた。それでも経済水準は基本的に横這いを続けている。手を離せば景気が底なしに急落することが恐れられてきた。その結果、経済体質は極端に悪化してしまった。

根本から改革を考えなければならない。どれほど景気が悪化しても、かつてほどの状況にはならい。どん底からでも大発展を遂げた日本経済であることを思い出したい。当然ながら相当な覚悟と準備が必要である。

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2021.8.1)から---

 

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