2021.5.1

活用しきれない超大型連休

   ―――メリハリの利かない経済活動―――

     名古屋大学  客員教授   経済学博士  

 今年ほど大きな連休になる年は少ない。1日休めば7連休、3日休めば11連休になる。これを活用するために半年も1年も前から綿密に計画しようとしたはずである。海外旅行がその代表である。せめて国内旅行でも行かなければ仲間で話ができない。子供たちの付き合いも考えれば、無理を承知で予算を考えたであろう。

 多くの社員が休暇を取ると予想されれば、会社としても対応しなければならない。思い切って休みにするところが増える。工場ではこの機会に大規模な改修工事などが計画される。

 これらの結果、経済活動が停滞する反面、多忙を極めるところがある。旅行、興行、飲食業をはじめ大規模工事なども予め大規模な準備が行われ、書き入れ時を迎えるはずである。

 それらの予定が全部狂ってしまった。新型コロナウイルスのお陰で大きな計画が立てられなくなった影響は戻らない。これからも用心が必要だと言われると、細々とした楽しみを探すことになり、社会全体が委縮したまま活気が出てこない。

この傾向は超大型連休が終わっても続く恐れがある。消費が抑えられるのであるから人々の懐は豊かであり、全体としての購買余力は大きいと思われる。しかし、それらを使う機会がなく、その状況が続くと、この動きが節約ムードにつながることが考えられる。

一旦は大きく落ち込んだ個人の消費が大型連休を機会に落ち込んだ分を含めて盛り返し、全体の景気を引き上げることを誰もが期待していたはずである。それが実現しないと大変である。大きな打撃を受けてきた関係業界が息を吹き返す機会をなくすと、やっていけなくなる。働いていた多くの従業員は職を失い収入が無くなる。暗いムードが出てくると経済全体が委縮してくる。

そうならないように政府は懸命である。直接被害を受けている業界だけでなく、全体としての活気を出させようと以前から各種の政策を打ち出してきた。ところがそれらが新型コロナウイルスの波で押し潰されている。この機会にこそ目先の小さな論議ではなく、大きな将来計画を立て推進したいものであるが難しそうである。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2021.5.1)から---

 

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