2021.4.1

景気の回復力と持続力

   ―――反発力を抑える過大な財政赤字―――

      名古屋大学 客員教授   経済学博士 

 新年度の景気は新型コロナウイルス次第である。ワクチンのお陰で収まることが期待される。しかし変異するウイルスの行方が分からない。一旦収まっても次ぎの波が押し寄せるかもしれないと言われると将来の予想が難しくなる。

 これまでの外出制限の景気への影響は極めて大きい。興行、旅行、飲食関係への打撃は致命的である。その反面、在宅に基づく需要で潤っている部門もある。しかし全体としては消費が大きく落ち込んでおり、その結果として景気の下落は深刻である。

 人々が消費をしなくなった分は資金が手元に残る。貯蓄は増えており、それが将来の消費に向かうはずである。大きな景気の押し上げ要因となる。コロナ禍さえ払拭されれば、人々の気分も様変わりとなり、鬱積している分が明るい方向へと転換することが期待できる。マイナスへ落ち込んだ経済成長もプラスに転じるであろう。弾みが付けは元の水準を大きく超えて行くことも考えられる。

 ところが今回の場合は大きな問題を抱えている。これまでにコロナ対策として強力な施策が採られてきただけに、その後始末が深刻な問題を遺しているからである。

 新型コロナウイルスという突発的で深刻な事態であっただけに、政府が全力を挙げて対応する必要があった。そのため政府は莫大な資金を救済のために投入してきた。おかげで倒産も失業もこの程度で収まっている。巨額な財政赤字のおかげで現在わが国の経済水準がこの程度の低下で止まっているのである。

その一方で莫大な国家財政の赤字がさらに急増している。コロナ騒動が終わったとしても、今年度中は対応を緩めることはできないであろう。しかし緊急対策として膨らんだ膨大な財政赤字をいつまでも続けられるはずはない。

 財政赤字の圧縮分の倍程度は経済水準が低下するのは避けられない。その要因を抱えているだけに、景気が回復するにつれて景気の頭を押さえる可能性が強くなる。経済が元の水準へ戻り、さらに上向きになると期待することは難しいと思われる。

 

---ISIDフェアネス ・パーフェクトWebへの寄稿(2021.4.1)から---

 

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