2021.1.1

新年への期待  ―――再発展を始める年に―――

       名古屋大学  客員教授  経済学博士      

 新年を迎え今年がより明るい年にと念願しない人はいない。昨年が新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込んだ反動として大きな上昇が期待されている。それはコロナウイルスの影響が終息することが前提になる。ところが新型コロナウイルスのことは専門家でも意見が分かれている。最終的にはワクチンが出来て多くの人に接種できるようになって収束すると言われる。一方ではウイルスが変化して毒性が弱くなったり伝染力が低下するとも言われている。ウイルスが変化すると、せっかく苦労して作ったワクチンが効かなくなる恐れがあるとの説もある。

 対策として人々の交流を制限すると罹患者は減少する。ところがそれでは経済社会が成り立たない。制限を緩めると、罹患者が急増する。多くの国の惨状を見ていると、被害の小さい国でも警戒を緩めることが難しい。

 国民の日常生活にまで影響が及び、社会不安につながるために各国とも政府は救済に懸命である。そのおかげで世界の景気はこの程度の低下で済んでいる。一層の援助をと政府に要請する声は大きい。しかし政府のできることには限界がある。すでに限界にきている国は多い。中には限界を突破している国もある。世界経済の回復は容易なことではない。

幸いにも我が国は恵まれている。1年遅れではあるがオリンピックとパラリンピックがあり関係者が開催に献身的な努力を重ねている。当初の規模とは比較にならないものの、明るい要因であることは間違いない。欧米の諸国とは異なり我が国の経済力はまだ大きい。それを利用すれば、まだ景気の下支えを期待することができないわけではない。

しかし長年にわたり続けてきた政府への依存によって、民間活力が低下している現状を見直す必要がある。日本経済の長期にわたる低迷の根本原因を見定め、経済再発展を目指さなければならない。それには国民も企業もそれなりの覚悟を決め、それぞれが現状打破のために懸命な努力をする姿勢を取り戻す必要がある。その結果として今年が日本経済の再発展を始める年にしたいものである。

---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2021.1.1)から---

 

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