2020.11.1

元へ戻れない世界経済を前提に

   ―――国際化の反動は恐ろしい―――

      名古屋大学  客員教授    経済学博士  

 新型コロナウイルスの猛威が全世界を席巻している。国によって影響が違っており、感染者が極めて少ない国や抑え込んだ国もある。しかし、いったん抑え込んでも手を緩めると感染者が増加するため、制約を緩めることが難しい。

各国の風習や政策による違いが取りざたされているが、いろいろな説が出ている。分かってきたことも多いとはいえ、分からないことも少なくない。ワクチンの開発が待たれるものの、副作用もあり各種の検証を経て実用になるには何か月もかかるらしい。その間にウイルスの方が変身するとワクチンが効かなくなると言われると途方に暮れる。収束するまでには相当な期間が掛かると覚悟せざるを得ない。

世界各国で旅行業、飲食店、興行などが成り立たなくなり多くの人が職を失った。各国の政府は大量の資金を捻出して救済に乗り出している。それでも大部分の国で実質国内総生産が前年の水準を下回るであろう。借金ができる政府は少ない。すでに限界にきている国が多いと思われる。政府の支援がなくなれば、経済水準はさらに下落する恐れがある。

もちろん新型コロナウイルスが収束すれば経済水準も急速に戻るはずである。ところが各国の政府が対策のために作った膨大な借金の削減が必要になり、長期にわたる増税が待っている。それが経済成長を抑制することになるため世界経済が元へ戻ると考えることは難しい。

経済の低迷が続くと社会に不満が高まる。他国に甘い態度が許されなくなり自国第一主義がより強まるであろう。国内産業を保護するために輸入を制約する動きが拡大し、長年にわたり続いてきた自由な貿易と各種の交流が復活できなくなる恐れがある。

輸出環境が悪化するのは避けられない。関連する多くの産業が対応しなければならない。国際的な分業体制を見直す必要がある。海外への依存の危険性の再認識が迫られる。生産体制の再構築には気が遠くなるような企業と国民の尽力が必要である。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2020.11.1)から---

 

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