大災害への備え

   ―――避けられない耐乏生活―――

 2020.9.1   名古屋大学  客員教授  経済学博士  

 大災害が忘れない間に次々とやってくる。政府の対応は遅いし不十分で必要とするところへ救済の手が届かないと言われる。それでも広範囲にわたる大規模な対策は政府に依存する以外にない。

災害対策には相当な準備が必要である。国だけでなく各地方公共団体の役割も重要である。いつどこで起きるか分からない事態に対応するためには相当な無駄を覚悟しなければならない。それを政府に求めると最終的に国民の負担が膨大になる。その覚悟すなわち大増税が必要である。

 それでも細部にわたって政府が面倒を見ることは不可能である。日ごろから個人も企業も大災害に備えることが必要である。

分かっていても、なかなかできない。どれほど準備をしても予想を超える事態が起きることがある。その場合にもまず生き延びなければならない。必要最低限の資金が必要である。それが個人の貯蓄であり、企業の内部留保である。

 ところが、それを軽視する風潮がある。貯蓄のためには消費生活を犠牲にしなければならず誰もが嫌がる。しかも人々が買わなければ売れなくなり景気が悪くなる。その結果として雇用も賃金も伸びず悪循環になる。景気を良くするために消費を奨励しているのが現状である。企業が内部留保をして資金を使わないから景気が良くならないと言われ続けてきた。

 それらは間違いではない。ただし平穏な経済が続くとの前提が必要である。現実にはこれほどの大災害が起きている。新型コロナウイルスの猛威が全世界を揺るがせ、経済活動ができなくなって沈静化の目途が立たない。

 今や生き延びて立ち上がるためには大量の借金が必要である。ただし借金は貯蓄の反対である。一旦作った借金はできる限り早く返済し、将来の大災害への準備のために貯蓄をしなければならない。借金の返済のためには相当な節約が必要であり、それが全体の経済水準を大きく引き下げることは避けられない。それを認識して個人も企業も国も準備をする必要がある。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2020.9.1)から---

 

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