2020.8.1

どん底から世界最高へ

   ―――改革のための落ち込みを恐れるな―――

      名古屋大学  客員教授    経済学博士  

 マスクのため一層暑い夏となった。新型コロナウイルスの第2波が心配で警戒を解くことができない。「3蜜」を避けることが前提となると、接客業など多くの産業では採算が取れない。自宅勤務の問題も大きい。多くの職場では相互の密接な連携によって成り立っている。それが許されなくなると回っていかなくなる。

その上の全国的な大水害である。まさに緊急事態である。政府は総力を挙げて対応に当たり、各方面へ膨大な支援をしている。そのために莫大な国債をさら追加で発行するのはやむを得ない。

ただし、その借金は事態が収束した後、国民が返済していかなければならない。早く返済しなければ、巨額の借金に押し潰される。膨大な借金を返済するための負担は大変である。借金を返済するためには徹底した節約が必要であり、景気を大幅に悪化させる。それを長期間続けざるをえない。

そのようなことは到底耐えられないとの意見がある。しかし、われわれには、どん底から這い上がった体験がある。

75年前、敗戦の結果は悲惨であった。戦争のためにすべてを犠牲にし、すべてを失った。多くの有為の人が亡くなった。空襲でほとんどの都市が焼失し壊滅した。住む家がなく,着る物がなく、食べる物がなかった。全国民が毎日食べることに必死であった。何もないところからは何も作り出せない。永遠に悲惨な状況が続くと思われた。将来への夢や希望は消え失せていた。

そこからの再出発であった。奇跡の復興をとげた後も急角度の成長を続け、国内総生産世界第2位を達成した。その間は決して平坦な道ではなかった。世界的にも激動の時代であった。大不況も経験した。それらの多くの難関を乗り越えて経済成長を続け、一人当たりの国内総生産世界一をうかがうという世界の歴史に残るであろう奇跡の発展を実現したのである。

当時を思い起こせば、われわれに不可能なことはない。一人一人が決心し総力を挙げて改革を進めるべきである。そして再び力強く発展する日本を取り戻したいものである。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2020.8.1)から---

 

inserted by FC2 system