戻らない景気

   ―――長期間にわたる景気低迷の恐れ―――

2020.7.1     名古屋大学  客員教授  経済学博士  

 大きな災害によって景気が大きく下降しても、その後には反動もあって景気が戻る。場合によっては復興のための需要が以前よりも景気を押し上げることも考えられる。

ところが今回の新型コロナウイルスの場合は全く違っている。感染者が出なくなっても2次感染の心配があるために警戒を緩めることが難しい。観光業をはじめ各種のサービス産業はもちろんのこと多くの飲食業が成り立たない。来客には波がある。時には大勢のお客が来て込み合うことを前提として成り立つ商売が大半であろう。客の方も、わいわいがやがやとした雰囲気でなければ盛り上がらない場合が少なくない。経済社会に活気が戻らない。

在宅勤務が推奨されているが、それが軌道に乗るためには綿密な準備が必要であり、相当な期間が掛かる。それまでの間は効率が落ちるのは避けられない。社会全体として悪影響が続く。

新型コロナウイルスの猛威は全世界に及んでいる。深刻な影響を受けている国が大部分である。長期にわたる規制に社会が耐えられなくなって解除を迫られている国が多い。収まりつつある国も第2波、第3波を意識すれば、完全に元へ戻り国民が自由に活動できるようになるまでには相当な期間が掛かるであろう。その間、経済活動は元へ戻らない。

 その影響は国際化が進んでいるため深刻である。世界各国の景気が戻らないと輸出が復活しない。海外での生産活動が軌道に乗らないと、海外での部品の調達ができないため、国内の生産が支障をきたす。たとえ需要があっても応えることができない。長年にわたり推進してきた国際化を見直し、生産体制を再構築することも必要である。

 その間は経済活動が停滞するであろう。倒産が増加する。失業者が増え、人々の収入が減少する。生きていけない人々が増えて対応に追われる。消費は低迷して戻らない。モノが売れなくなって企業の経営は悪化し悪循環になる。その状態が続き景気は落ち込んで回復しない。

 当然に政府は懸命な救済策と同時に景気下支えをするであろう。しかし政策努力を超えた大きな世界的な動きになる恐れがある。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2020.7.1)から---

 

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