2020.5.1

医療崩壊の次は・・・・  

   ―――困難な経済の復旧―――

     名古屋大学  客員教授   経済学博士  

新型コロナウイルスが全世界で猛威を振るっている。頼りにする病院は最も危険な場所でもある。当然、最大の注意が払われているが、それでも感染者が出る。すぐに接触した人々が2週間の自宅待機をする。忙しく立ち回っている病院内の医師や看護師、介護士、職員が出勤停止となれば病院が成り立たない。感染者が増え、検査を依頼する人が急増する一方で対応できる病院が減り、医療体制が崩壊する。

 緊急事態宣言が出され、総力を挙げて対策を実施している。その基本は感染者の隔離である。しかし発病していない感染者が増加すると、もはや誰もが感染者と考えなければならない。今や人の接触を避ける以外にない。人と人との間隔を2メートル空けることが必要と言われる。しかし人々が働く場所で2メートルの間隔を空けることは極めて難しい。多くの職場が成り立たない。

 緊急事態になると最後の拠りどころは国家、政府である。自宅蟄居を求められる国民は行政に対してきめ細かい対応を求める。役所は対応のために忙しくなる。一方で役人の中でも感染者が広がる。その周辺にいた人々も自宅待機となり仕事ができなくなる。行政の崩壊である。警察も例外ではなく治安も維持できない。毎日の生活に欠かせない社会の多くの機能が麻痺して多くの人々が生きていけなくなると嘆いてみても助けることができる人が居なくなる。

 生産活動やサービスの提供などの経済活動どころではない。物がなく物流が途絶えがちになると深刻な状態になる。そのような事態が想定されていないからである。そのために日ごろから準備をしていた人や企業ばかりではない。しかも事態がいつまで続くか見当もつかない。

 経済活動のためには社会の安定が大前提である。長年にわたり必要な条件が満たされ、経済が安定して効率的に運営されてきたために、その有難さを感じることがなかった。それが根本から覆り、復旧の目途が立たない。それが全世界で起きているのである。わが国を含め、たとえ一部の国で新型コロナウイルスの災厄を克服しても国際的な取引の恐ろしさを痛感した以上、従来へ戻るだけではなく再構築を考えざるを得ない。経済活動の復活は容易ではない。

 

---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2020.5.1)から---

 

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