2020.4.1
ウイルスによる世界経済の麻痺
---景気は大幅な落ち込みへ---
名古屋大学 客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
新型コロナウイルスが全世界中で猛威を振るっている。罹患者が急増する国は勿論のこと、それらの状況を見せつけられている各国が対応に追われている。「国境を閉鎖する」という強硬措置が多くの国で採られた。不要不急の集まりを自粛するようにとの通知に始まり、外出禁止の命令まで各国政府の施策が急変する。
急増する重症患者を収容する病院が不足するのは当然である。担当する医師も看護師も医療器具も間に合わない。院内感染もあり患者が急増している。各国で非常事態宣言が出され、感染阻止に全力を挙げる事態になっている。
経済活動どころではない。一人ひとりの日常生活が支障をきたしている。航空会社をはじめとする旅行関係社、各種興行、飲食店をはじめ多方面で売り上げが激減し、回復の目途が立たない。
影響は需要の減少だけではない。国際化が進み、国際的な分業体制ができている業界が少なくない。部品の調達ができないために生産できないところが出てきている。復旧の目途が立たないため対処の方法がない。
この騒動が起きる前から我が国の景気は陰りを見せていた。それを持ちこたえてオリンピック景気に繋げたいと多くの人々が期待していたと思われる。それが一挙に吹き飛んだ。長年にわたり懸命な努力を重ねてきた関係者は簡単に引き下がることができないであろう。しかし全世界を席巻する新型コロナウイルスの猛威に逆らうことはできない。
政府は打撃を受けている人々や企業に対して救済措置を発表している。急落する景気対策として金融政策や財政政策を総動員して対応するであろう。しかし、それらが功を奏するためには、まず感染を食い止めなければならない。その後も経済活動が戻るまでには期間がかかるであろう。長年にわたって進めてきた国際化の問題点が明らかになった以上、旧に復するだけでは済まない。生産体制の見直しは長期的な大問題である。全体の経済が元へ戻ることは簡単ではない。景気の下降が続く恐れがある。
---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2020.4.1)から---