2020.2.1

低迷する世界経済

   ―――国際間の混乱は続く―――

         名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

 アメリカなど各国首脳の言動によって世界中が翻弄されている。影響力が大きいために対応を迫られ一喜一憂せざるを得ない。この情勢は当分の間、続くと思われ、以前のような安定した世界情勢に戻ることは難しいであろう。

 不安定な情勢の下では経済の活況を期待することができない。経済が低迷すると社会に不満が増えて来る。それらの不満が報道によって増幅され、それを政治が利用する。政治的な混乱が増大し、経済活動に支障をきたす。悪循環になり景気は低迷し、回復の糸口が見つからなくなる。

 分かっているだけに各国とも懸命に景気の振興に力を注いできた。金融を大幅に緩和させ財政政策を活用して目先の景気を少しでも良くすることを優先してきた。その結果として今日まで世界経済は維持されてきているものの、長年の無理が限界に近づいているため、さらなる効果を期待することができなくなっている。

 主要国を含め世界の各国とも根本から経済構造を見直し建て直さなければならない。そのためには苦しくても、いったんは経済を正常化させる必要がある。過度の経済政策で異常になった超金融緩和情勢を戻さなければならないし、膨大になった財政赤字を解消する必要がある。ところが、そのためには経済があるべき水準へと戻ることを覚悟しなければならず、景気は落ち込むであろう。それが容認できないために経済政策の転換は難しい。国内の政治情勢が不安定なため、各国とも政策の大きな手直しはできないと思われる。

 おかげで当分の間は大きく景気が落ち込む恐れはないと考えられる。しかし、このことは経済の悪化要因をさらに増大させて将来へと先送りすることを意味している。

 結果として世界経済は成長力の復活がないままに低迷を続けることになるであろう。不安要因は各国の国内に留まることなく各国間の摩擦を大きくし、大きな紛争に繋がることも考えなければならない。それに備えることがどれほど大変であり多くの犠牲を求められるかを想像すると空恐ろしくなる。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2020.2.1)から---

 

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