2020.1.1

2020年の経済見通し

   ―――オリンピックへの期待は過大―――

                     名古屋大学  客員教授

                             経済学博士  

 オリンピックに熱を挙げているのは選手と関係者ばかりではない。報道機関に煽られて国中がオリンピック一色になっていくであろう。

経済界も同様である。夏に向けて競技関係の駆け込み工事が進む。道路などの整備も必要になる。土木建設ならびに関係分野では人手不足が進み、全国から人が集まる関係で各地にその影響が及ぶ。賃金が上がり、人々の収入が増え、それが消費の増加になると期待される。

多くの外国人が訪れる。国内でも大勢が東京へ集まる。すでにホテルなどの宿泊施設が満杯なため周辺へと大きな流れができるであろう。オリンピックが終わると、人々は全国の名所旧跡をはじめ行楽地を目指すと考えられる。好況の輪が広がる。

 それらは前回の東京オリンピックで経験している。当時は新しい競技施設が次から次へと作られていった。オリンピックに間に合わせるために大至急で東海道新幹線が建設された。東京の高速自動車道路が突貫工事で作られた。

 それらに比べると今回の盛り上がりは小さく静かである。そのため経済的な効果は巨大であった前回に比べると残念ながら小さいと思われる。それだけにオリンピックの後の反動減も心配するほどにはならないのではなかろうか。反動による景気の下落は予想されており、政府もその対応をすると考えられるためでもある。

 問題はむしろ産業界が世界経済の低迷を用心して守りの姿勢を強めていることである。現実に輸出環境の好転は見込み薄と考えざるを得ない。世界経済を牽引したアメリカも中国も往年の力を無くしている。その影響はヨーロッパ、東南アジア、中進国から多くの発展途上国にまで及び、世界経済は低迷を続けるとみられるからである。

 企業の投資意欲は高まらない。人手不足は続くものの、企業は賃金を上げるよりも守りの姿勢を強めるであろう。所得が上がらないために消費も盛り上がらない可能性がある。全体としての経済は横這いを続けると考えられる。

 

---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2020.1.1)から---

 

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