2019.12.1

赤字予算の恩恵

   ―――借金による景気維持―――

                 名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

 予算の季節となった。各方面からの要望が膨大な一方で財源が不足する。財源は税金であるが、国民は税金を納めたがらない。今回の消費税の僅か2パーセントの引上げにどれほどの期間と手数がかかったかを見ても増税がいかに難しいかは明らかである。増税分のかなりの部分を各種の新規施策に充てるとともに、負担軽減のために各種の工夫を凝らしている。そのため複雑で膨大な手数が掛かることになってしまった。異常と言うべきであろう。

 財源難を解決する方法がある。借金である。それによって資金不足を解消すれば、多くの問題を解消することができる。政府としては国民の要望を満たすことができる。国からの資金が潤沢に出れば企業も国民も幸せである。万事が円満に収まる。

税金を余分に治める必要がなく、それでも国から資金が民間に出される。それが社会福祉であろうと公共投資であろうと、需要を増やすことになり、それの何倍もの最終需要を拡大し、経済成長率を高める。景気が良くなる。

 緊急事態であれば、それを回避するために借金することをためらってはならない。それは個人でも企業でも国家でも同様である。ただし借金は大至急で返済する必要がある。借金を返済するためには収入よりも支出を少なくしなければならない。その結果、個人ならば生活水準が下がり、企業は活動を縮小し、国全体としては景気を悪化させる。

 それを避けるために借金依存が続いているのが我が国である。おかげで景気は大きく押し上げられたままの状況が長年にわたり続いている。来年度の予算についても赤字幅は消費税の増税で減るものの、膨大な財政赤字が続くことになろう。景気の悪化を恐れる政府は、その傾向が出る場合には景気の維持に力を入れると言っている。

結果として今後も当分の間は国の借金による景気が続くであろう。我々にとっては当面その恩恵に浴することができる。ただし、膨大な借金が上乗せになり、その金利支払いと返済の重荷を負わされる将来の国民にとっては悲劇的であることを忘れてはならない。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2019.12.1)から---

 

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