2019.11.1

異常な資金運用難

   ―――困難な転換―――

                 名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

 資金の運用に頭を痛めている向きが多い。金利が低すぎるからである。困っているのは大金持ちだけではない。庶民がようやく貯めた貴重な資金を老後のために少しでも増やそうとしても難しい。投資の方法は多種多様である。株式投資や投資信託、各種の保険から不動産投資そのほか諸々の投資方法が次々と提供されている。しかし利益を求めれば危険が伴う。危険を避けて旨く利益を取ることができる特殊な才覚のある人は少ない。

それでも個人は恵まれている。絶対に安全な個人国債があるからである。値下がりの心配がなく、1年経てばわずかな費用で自由に換金できるうえに金利が極めて高いからである。とは言っても年率は僅かに0.05パーセントであり、それ以下にはならないものの、低過ぎる感は当然である。

そのように有利な個人国債を買うことができるのは個人の特権であり、企業は買うことができない。企業が国債を買うとすれば、金利はマイナスである。企業が努力して資金を貯めていても目減りしていくのである。

それだからこそ企業は資金を貯め込むのではなく設備投資に使うべきであると言われる。企業は将来の発展のために常に投資をしようとしている。しかし経済が拡大しないため採算の合う投資対象が見当たらない。企業が設備投資をしないから経済が成長しないと言われても個々の企業にとっては動きようがない。

資金が余るなら従業員の給料を上げるべきだと言われる。配当を増やせと株主が言う。それらの要望を受け留めながら、企業経営者は経営の安定と将来の発展を目指さなければならない。

残念ながら苦難は続くであろう。国際情勢を見ても国内の将来を考えても明るくなる要素が少ない。政府として打つことができる政策には限界がある。日銀としては異常に大量の資金を投入しているが、それが景気をよくすることにはなっていない。そして過剰な資金をより過剰にして金利をさらに引き下げる結果に繋がっているだけである。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2019.11.1)から---

 

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