2019.10.1

輸出環境の悪化

    ―――長引く影響の覚悟と準備―――

                 名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

 輸出が伸び悩みから減少気味である。 

 長期的に見ると、産業の空洞化が進んでいることが大きい。より安い労働力を求めて主として発展途上国へ多くの企業が進出した結果である。生産体制を整えることは至難の業である。企業は長年にわたる努力の成果として、ようやく現地生産を軌道に乗せ、品質の向上を図り、立派な製品を作るようになった。もちろん多くの国々で独自に高い品質の製品を生み出したこともある。

 それらの国では日本からの輸入が必要でなくなった。さらに製品を輸出するように変わっていった。我が国からの輸出が減り、逆に我が国がそれらの国々から製品を輸入するようになった。

 かつては世界中を席巻した日本製の電気製品の多くが逆に海外から輸入されるようになり、国内で生産しなくなった。

 そのうえ海外の状況が悪化してきている。アメリカと中国の関係が貿易摩擦だけではなく両国の世界戦略に至る問題から来ているため簡単に決着がつくとは思われない。その世界経済への悪影響は長期にわたり、世界経済が再び以前のような高い経済成長になることを期待することは難しいであろう。

 身近なとこでは韓国との関係悪化が続くと思われる。韓国への輸出が全体に占める比率は決して小さくはない。しかも渡航者の往来を含めて影響は各方面へ及ぶ。それが簡単に解決するとは思われない。問題は当事者である輸出企業だけでは収まらない。輸出産業には多くの関連企業がつながっている。それらを通じて影響が広がると考えなければならない。

 韓国側にも影響が出るであろう。韓国の経済が縮小すると、その影響も加わる。すでに韓国との取引のある企業、今後の取引を考えていた企業は再検討を迫られている。代替の国が模索されていても、早急に効果を期待することは難しい。

 我が国の輸出が長年にわたり急増を続けたのは、国内産業が意欲的な発展を続けると共に長期にわたり世界経済が急拡大を続けたおかげでもある。その両面が転換してきているのである。輸出を通じて全体の経済へ影響が及ぶと考えられる。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2019.10.1)から---

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