2019.6.1

米中衝突の影響は大きく長い

       ―――深刻な背景に注目―――

       名古屋大学  客員教授   経済学博士  

 アメリカのトランプ大統領の発言に世界中が翻弄されている。

大胆な政策であるだけに当初は単なるこけ脅しと思われていた方針が実行に移されると、トランプ大統領の意図を無視できなくなった。影響が大きいだけに、どの段階で方針の転換が行われるかにも注目が集まる。

打撃を受けるのは相手国ばかりではない。国際的な取引が多角的に行われており、周辺国を含めてアメリカ自身へも影響が及ぶ。そこまで考慮されているかと疑問も出ている。

目先的な目標は国内政治であろう。大統領選挙を念頭に置いた過激な発言と考えられている。それだけにトランプ大統領の資質に基づくもので、将来、大統領が交替すれば、元へ戻る可能性がある。それを期待する向きも少なくない。

ところがアメリカの抱える国際収支の大幅な赤字と鰻登りに急増する対外純借金は誰が大統領になっても、放置できず、膨大な貿易赤字の是正は差し迫っている大問題である。

解決のためには理不尽と言われても強力な経済外交が必要であり、それを長年にわたり効果が出るまで続けざるを得ないであろう。

 相手の中国も妥協する余裕がない。国内政治がもたないと言われている。面子もあり、対応措置を取ることになろう。

 その結果は世界経済にとって悲劇である。世界の貿易量は減少し、世界経済は大きく縮小する。長年にわたり世界経済を拡大させ続けてきたアメリカと中国が逆方向へと向かうからである。

 問題が巨大になっているため簡単に解消できない。長期にわたり下向きの力が続くと考えざるを得ない。

アメリカと中国に代わる国や地域が出てくれば良い。しかし、世界中の多くの国々は降りかかる火の粉を振り払うのに懸命であり、むしろ世界的な縮小に輪を掛けるだけになるであろう。

 深刻な事態が長期に続くことに対し、日本政府は懸命に景気の下支えを考えるであろう。しかし、すでに財政体力を使い果たし疲弊している我が国の政府に期待することは難しい現実がある。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2019.6.1)から---

 

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