平穏に過ぎた平成の経済

2019.1.1             水 谷 県 治 

 大災害の印象が強い平成の時代である。しかし日本経済に関しては平穏に過ぎたと言うべきであろう。

 経済成長からは見放され、経済は拡大することがなかった。途中で一高一低はあったものの、大きな落ち込みはなかった。

 このような時代に生まれ育った国民が増えてきた。かつての高度経済成長の経験は忘れられ、低迷する景気が常態となると、将来にわたり同様な経済が続くと思ってしまう。

 この間に着実に進行したのが人手不足と高齢化である。それらは今後も変わることがない。それに伴う問題は深刻である。需要と供給の両面から日本経済を押し下げることになるであろう。

 平成時代の安定した経済は異常な力で押し上げられた結果であることを忘れてはならない。

 第一に世界の経済が高い成長を続け、それが我が国の輸出を増やす原動力になっていった。それをもたらしたのは世界一の経済大国であるアメリカが世界中から膨大な輸入を続けたためである。

アメリカが膨大な貿易赤字を出し続けた影響は大きい。世界中がその恩恵を被ったからである。中国経済の躍進はその一つである。それが世界中に波及して世界経済を押し上げた。

しかしアメリカの赤字を支えてきた対外借金は限界をはるかに超えている。もはやアメリカは膨大な貿易赤字を削減し黒字への転換を図らざるを得ない。このことは世界各国の輸出が大きく減ることにつながり、世界経済を縮小させるであろう。

それが相当な規模になることが予想される。我が国も大きなマイナスの影響を受ける。その時、これまでの長い期間、異常に恵まれていたことを知ることになる。

 さらに大きいのが日本政府による赤字財政による経済水準の異常な嵩上げである。それが半世紀もの間、続いてきたため、暗黙の内に、それが今後も続くと考えがちである。しかし異常に大きな異常が異常に長く続いたのである。その咎めは異常に大きくなり、もはや放置できなくなっている。

 正常化すると、これまでの異常な分だけ経済水準が低下する。その幅が極めて大きいことを知っておく必要がある。しかも長年にわたり蓄積してきた負の遺産を削減しなければ正常化しない。

 膨大な国の借金を削減しなければならないのである。それには大増税が避けられない。それに伴い経済水準の低下幅は極めて大きい。当然、国民の一人一人の生活水準は大きく下落する。

 それが分かっているだけに、長年にわたり正常化を先送りして平静を維持して来ていることを忘れてはならない。もはや限界をはるかに超えて平成を終わろうとしている。

 このような時代を作ってしまった我々年寄りが心から反省する必要がある。我々には対処の方法がないからである。皆様方に実情を理解してもらい、将来に備えてもらう以外にない。

 

---名大卓球部OB会誌Match Point2019への寄稿P25-26(2019.1.1)から---

 

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