名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

 2019.4.1

困難な世界経済の復活

―――甘い考え方は禁物―――

 世界経済は波乱含みで新年度を迎えた。

 米中の摩擦をはじめとし、イギリスのEU離脱やヨーロッパ諸国の内政の不安定、北東アジアの混乱など多くの地域で困難な問題を抱えており、経済へ悪影響を及ぼしている。

 アメリカのトランプ大統領など要人の発言に一喜一憂するのも当然である。それによって先行きに対する見通しが悲観から楽観へ、さらにまた悲観へと大きく揺れ動く現実があるからである。

 長期にわたり高い経済成長を続け、アメリカに次いで世界経済を引っぱっていた中国の成長率が落ちてきた。そのため世界各国が影響を受け、我が国の輸出環境は悪化している。海外進出の方針の再検討を迫られている企業は少なくない。

 輸出産業の裾野は広い。多くの分野へ影響が及び、それが全体の景気を押し下げている。景気を良くするためには世界経済を再び拡大させることが求められている。

しかし、それは極めて難しい。長年にわたり主要国の経済政策によって世界の経済水準が無理に押し上げられていたのであり、それが限界に来ているためである。

景気が悪化すると国民の不満が高まり国内の政治情勢が不安定になる。それを防ぐために経済政策が利用され景気を無理に引き上げてきた。使われたのは金融の力である。

多くの国で膨大な借金によって需要が作られ、経済水準を押し上げてきた。それによって世界的に高い経済成長を続けることができた。それが限界にきているのである。

この間の体質の悪化は、もはや耐えられない段階まで来ていると思われる。破綻は体力の劣る国から表面化する。それが世界の大国に及んでいるのである。

是正のためには長期にわたる強力な改革が必要である。国民はこれまでのような安易な経済生活を謳歌することはできず、緊縮を迫られ、経済は縮小する。世界経済は様変わりになる。今の水準を小幅に上下する程度で推移すると考えているわけにはいかない。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2019.4.1)から---

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