2019.3.1

財政赤字に支えられた平成経済

    ―――平穏の先に要注意―――

                 名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

 平成の経済は平穏なままに終わろうとしている。全体の経済規模を示す国内総生産は横這いのままであり、企業の売り上げは伸びない。それでも各企業の努力の結果、企業収益は上がっている。

 景気に明るさが見えないとは言っても失業率は下がっており、人手不足の悩みが増えている。安定した経済情勢が続いていて大きな不満は聞かれない。

 長年にわたり続いてきた状況であるために今後も同様であろうと思われるのが普通である。今後とも安定した経済の下で安穏に暮らしていくことが当然と考えている人が多いであろう。

 平成時代を振り返ってみると、自然災害を含めて大きな問題が起きていた。世界的にも多くの国で深刻な問題を抱え、その影響が我が国へも及んできた。それらを乗り切って今日の安定した景気があるのである。したがって今後も同様と考えられるかもしれない。

 現実には強力な政策によって景気が維持されてきている。中でも大きな力を発揮してきたのは財政政策である。景気が悪化しそうになる都度、景気振興策として財政赤字が上乗せされてきた。おかげで大きく落ち込むことなく景気が維持されてきている。

 さらに大きく景気を押し上げるためには、財政の赤字幅を拡大すればよかった。しかし、すでに巨大化した財政赤字を上乗せすることが難しく、結果として景気に弾みがつくところまでいかなかった。

 景気がようやく維持されている状態で、政策面での梃入れが止められず、赤字財政を続けざるを得なかった。そのため我が国の国債は急増を続けている。

 すなわち現在の我が国の景気は借金の急増によって支えられているのである。このような異常な経済運営を当分の間は続けることができる。

しかし、どこかの時点で転換しなければならない。その時は大きな景気の落ち込みになるはずである。大きな債務を急増させながら平穏を維持してきたのが平成経済であることを忘れることはできない。

 

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2019.3.1)から---

 

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