2019.2.1

加速する人手不足

    ―――影響は個人生活から経済全体まで―――

      名古屋大学  客員教授     経済学博士  

 極寒の候、寒風に身をさらして仕事をするのは大変である。それよりも暖房の効いた部屋の中でパソコンに向かっている方が楽である。嫌な仕事に携わる人が少なくなってきた。

 重要な仕事であると力説しても人が集まらない。熟練を要する仕事に携わる人が高齢化してきた。60歳は若い方だと言われるのは農業だけでなくなりつつある。

 廃業を考えざるを得ない部門が増えて来る。同業の他社があるため、その影響は目立たないとしても、事態は着実に進行していく。

 外国人に来てもらって助けていただかないと社会が成り立たなくなりつつある。それが将来的に大変難しい問題をもたらすとしても、目先を重視する意見に押され気味である。

 人々の日常生活にも影響が出ている。宅配便のサービスが悪くなったと嘆く人がいる。スーパーの対応が気に入らないと怒る声がある。介護部門の悲鳴が聞こえる。

 親切で丁寧なサービスが無料で受けられて当然と長年にわたり思い込んでいただけに戸惑うことになる。

 仕事が多くなったわけではない。全体の経済は拡大することなく、横ばいに過ぎない。その間に省力化が進んでいるため仕事量は減っているはずである。働き手が減っていることが原因である。少子高齢化の影響である。それが今後さらに進行する。

将来のために根本的な対応を考える必要がある。サービスの悪化を当然として受け容れ、従来よりも高額の対価を支払うべきである。各人の日常生活から、産業界の活動から、国全体の経済動向に至るまで転換を迫られている。

極めて重要なことは人手不足の中で厳しい指導が難しくなることである。仕事の質が低下する。良いものが作れなくなる。

 将来、経済社会が現在とは真逆の危険にさらされるであろう。ものが余る豊かな社会から、もの不足で貧しい社会への転落である。

目先の問題も重要であるが、将来の大問題はさらに深刻である。真剣に考えて対応を急がなければならない。

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2019.2.1)から---

 

inserted by FC2 system