2018.12.1  古屋大学  客員教授   経済学博士 

財政改革を先送りする幸・不幸

    ―――政府が頼りにできない将来への備え―――

 予算編成の時期になると、個々の案件の重要さが議論の中心となる。そして必要不可欠のところへ資金を張り付ける。その結果、総額が収入を超えて赤字になる。

本来は不足する分を支出予算から減らすか、増税によって賄うべきである。それをいろいろと理屈をつけて回避し、赤字財政を続けて、不足する分を借金である国債を発行して補ってきた。

 赤字の規模が増大し、それが長年にわたって続いたため、累積した借金である国債残高が膨大な額になっている。限界をはるかに超えていて、転換が必要なことは明らかである。

 それにもかかわらず財政の改革が進まない最大の理由は、その影響が極めて深刻であるためであろう。

 予算を獲得するために骨身を削る人々を敵にしなければならない。増税には誰もが大反対である。あらゆる理屈をつけ、政治的な圧力が加わる。

 しかも、財政支出の削減も増税も景気を悪化させる。その結果、企業経営は落ち込む。失業の増加や賃金の減少を通じて国民の生活が苦しくなる。法人税や所得税など政府の税収が減少するため、減らしたはずの財政赤字が当初案のようには減らない。

 分かっている悪い結果を明示して国内世論を財政改革へ誘導することは極めて難しい。追い込まれて財政破綻が表面化するまでは改革を断行するのは無理なのかもしれない。

 その時期はまだ先である。当分の間は大幅な赤字財政を続けることができる。その間は大きな経済の落ち込みはないままに推移することが予想される。ただし、その後の悲劇は救いようがない。

 ことの重大さを我々は知っていなくてはならない。国家財政が破綻した後は国に対しどのような援助を求めても無理だからである。

給料の支払いができないのであるから公務員は激減し、公共のサービスは受けられなくなる。社会保障も災害救済も期待できない。それらは個々の国民が自分で行う以外にない。気が遠くなるような準備が必要である。

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2018.12.1)から---

 

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