守りの姿勢がもたらす衰退
―――低迷する需要への対応―――
2018.7.1 名古屋大学
客員教授 経済学博士 水 谷 研 治
売り上げが伸びない。多少の上下はあるものの原則として需要が弱い状況が20年以上も続いている。
業種によって違いがあるものの、全体の経済が伸びていないのであるから原則として低迷を続けるのは仕方がない。
しかし売り上げが大きく下がっているわけではない。このまま横這いの状況に適応し、無難に過ごしたいと考える人々が多い。無理に高望みをすれば、大きな怪我につながる恐れがある。守りの体制になるのは自然である。
確かに国内の需要は増えそうもない。それに対応するために内部を固めることが重要なことは分かる。しかし、たとえ国内で優位性を確保していても、安泰ではない。海外との競争を無視することはできないからである。
多くの企業が国内における生産よりも人件費などで有利な海外における生産に力を入れてきた。その成果があり、多くの製品が海外で作られ、安く国内へ輸入されるようになった。そのうえ発展途上国では独自に、より良い製品が作られるようになり、多くの製品が国産品を圧倒する事態になってきた。
需要者にとっては良い製品が安く手に入るのであるから歓迎される。しかし国内の幅広い生産者にとっては販路が縮小する。先行きが暗くなれば企業の投資意欲が縮小する。これでは、より良いものをより安く作り出すことができなくなる。日本産業の活力が衰える。
この動きが続いている。日本経済の成長力がなくなって久しい。それでも豊かな経済社会であり、その中で安穏にやっていくことが目先的な安泰と幸せであることは間違いない。その風潮が蔓延している。
しかし日本経済が成長しないのであるから成長を続ける諸外国から取り残されていくことになる。将来は決して安泰ではない。
より良いものを目指して意欲を掻き立てる必要がある。それが一人一人の生きがいになって、企業や社会の活力と発展につながることが望まれる。
---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2018.7.1)から---