名古屋大学
客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
2018.6.1
内向きになったアメリカに要注意
―――長期的で根本的な対応が必要―――
海外と密接な交流があるとは限らない。したがって外国のことに構っていられないのが普通である。
ところが身近なところで大きな変動が起きてきた。しかも、その方向が大きく揺れ動いている。荒波が防波堤を乗り越えて身に降りかかる恐れがある。
外交問題に直接かかわることは難しい。変転する各国の事情を追い掛けるにも限度がある。しかし我々に大きく影響するアメリカの動きには無関心ではいられない。
トランプ大統領の特異な動きに世界中が振り回されている。しかし、その背景にはアメリカの経済力が弱体化してきたことがあり、もはや従来のままでは立ちいかなくなってきた。
経済力は最終的に国際収支に現れる。アメリカは国際収支の膨大な赤字を長年にわたり続けている。通常は許されない大幅な赤字をいつまでも放置しているわけにはいかない。アメリカは方向を転換しなければならない。
長年にわたりアメリカの大幅な赤字分だけ世界中は黒字を謳歌してきた。それがなくなれば、世界経済は縮小が避けられない。我が国にとっても直接・間接に逆風になる。
さらに大きいのはアメリカが内向きになる影響である。今後はアメリカが頼りにならなくなることを考えておく必要がある。我が国が自力で国土の安全と国の繁栄を確保しようとすれば、それなりの準備をしなければならない。
広大な領土・領海の安全を独力で守ろうとすれば、相当な覚悟と対応が必要である。そのためには国民一人一人がそれなりの犠牲を払う必要がある。
従来とは異なり、自分たちが獲得した成果を自分たちで受け取って使ってしまうことができなくなる。公共のために拠出しなければならない分が各段に増加する。それだけ国民は生活水準を低下させざるを得ない。それが全体の経済水準を低下させることは言うまでもない。その準備が必要になる。
---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2018.6.1)から---