名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

  2018.5.1

企業の最終責任者は経営者

    ―――政府の要請への対応―――

 政府は景気の維持・引き上げに懸命である。そのために企業に対して多方面から要請が続いている。例えば賃上げの依頼があり、企業の過剰貯蓄を投資へ回すように、といった具合である。

 それらが全体の需要の拡大に繋がり、周り回って個人生活を豊かにし、企業の業績が上がり、国家の税収も増えて、良いこと尽くめになる。

企業の経営者としても、一緒に働いている人々の賃金を少しでも上げて喜んでもらいたいと考えている。将来を展望すると、より効率化を図るための投資が必要であり、新分野への進出も考えなければならない。

 しかし変転極まりない経済界で生き残るためには配慮すべきことが多い。例えば深刻な不況になると高い賃金が大きな負担になることが考えられる。投資が実った時点で作ったものが売れなくなると倒産の危険が迫って来る。

最後には留保してきた資金を頼りにする以外にない。それは大企業でも中小企業でも、あるいは個人の家庭でも同様である。そのために節約に努めて資金を貯めているのである。

 景気が悪化した段階で政府がきめ細かく面倒を見てくれるはずがない。自由主義経済において主役は民間の経済人である。政府が経済活動の細部にわたり関与しようとしても、その能力もなく責任も持てない。

もちろん国の政策は国全体のことを考えての施策である。それが効果を発揮するためには私企業や個人の協力が必要であることは分かる。

 しかし最終的に責任を持つのは経営者であり、個人である。政府の要請がどれほど強くても、それを受け容れるために将来を甘く考えることはできない。

もちろん今後の経済を楽観的に見ることができれば、企業の行動は一斉に積極的に転じるであろう。現実には多くの経営者が将来に対して慎重な見方をしている。

---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2018.5.1)から---

 

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