名古屋大学 客員教授

                           経済学博士  

 2018.4.1

有終の美を飾る平成経済

    ―――波乱含みの世界の中での平穏―――

 高度成長経済の華やかさとは異なるものの、平成経済は文字通り平穏に推移するものと思われる。

 世界的には解決の難しい課題に悩む国が多い。国内に政治的な不安定要因を抱え、多くの国で宗教問題や民族問題が国内外に深刻な事態をもたらしている。

 本来なら仲介の役割を果たす大国が自ら紛争を招き拡大する事態では収拾の目途は立たない。

 それらが陰に陽に世界の経済に対し悪影響をもたらすであろう。ところが幸いにも目先的には我が国に直接大きな影響はなさそうである。

 政府は我が国の景気が緩やかな回復を続けており、現在も回復途上にあるとの見方をしている。すなわち今後も景気は落ち込むことなく、ゆっくりと回復の道をたどると言うわけである。

 将来にわたって明るい話題が多い。天皇陛下の御退位と皇太子殿下の御即位に向かって準備が始まった。その先には東京オリンピックが控えている。しかも安倍内閣が取り掛かる憲法改正を実現するためには景気の維持向上が不可欠と考えられる。

 政府は景気対策に総力を挙げるであろう。政府がその気になれば経済を強力に刺激することができる。財政政策を活用し、増税を延期する一方で財政支出を大きく増やせば、景気を引き上げることができるからである。

 ところが大きな問題が行く手を阻んでいる。膨大な国の借金対策である。国債残高を増大させないために財政赤字を大幅に削減するという正反対の施策が要請されているためである。

 もし財政赤字を削減すれば、景気は急落するであろう。現在の景気を維持させようとする安倍内閣でそのような施策が実行されることはないと考えられる。

 ただし財政赤字が膨大であるため、その積み増しになる財政政策の活用は限定されており、大きな期待を抱くことはできない。結果として平成経済は平穏に有終の美を飾るのではなかろうか。

---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2018.4.1)から---

 

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