名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

 2018.2.1

安全性の見直しに力点を

    ―――目先の犠牲は不可欠―――

 考えられなかった事故が増えている。鉄道の事故で大勢の人が足止めを食っている。製品の安全性に疑問が出ている。基礎的な原材料や基本的な構造に不安があれば、その影響は深刻である。

 山や河川など国土の保全に問題が発生しかねない。橋や道路、鉄道など公共施設の劣化が大事故に結び付く。交通網に重大な支障が生じると、社会活動が麻痺する。安全で効率的な日本社会の特性が損なわれる。

 幸いにして現在のところ重大な事故につながっていない。しかし悪化傾向を続ければ、やがては深刻な事態を招く恐れがある。

 振り返れば、我々は五十年も六十年も長期にわたる先人達のたゆまぬ努力の結果として、今日の世界に誇る効率的な社会を築き上げてきた。現在その恩恵を全国民が受けている。

 作り上げた設備、制度は劣化する。それに応じて補修、改善、作り替えを行わなければならない。それを怠れば、品質の低下は避けられない。

 その劣化傾向を避けるためには相当な資金と人力を投入しなければならない。それを我々が怠ってきたような気がする。目先の自分だけの幸せのためだけを願い、将来のために必要な最低限の努力をなおざりにしてきた可能性がある。

その結果としての品質劣化の傾向を阻止し、以前のような上向きの傾向に変えるためには、大転換が必要である。

我々が目先の利益を犠牲にして将来のために力を注がなければならないからである。

日常の生活の中で目先よりも将来を優先しなければならない。企業は現在の利益を分配してしまうのではなく、安全性の確保、向上のために資金を投入する必要がある。国家は今日明日の国民の福祉を考える前に将来の公共施設の保全、維持、向上に資金を使わなければならない。

国全体として十年、二十年を展望した根本的な方針の転換が必要である。

---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2018.2.1)から---

 

inserted by FC2 system