2018.1.1 名古屋大学
客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
不穏な世界と日本経済
―――平穏の内に将来に備える―――
天皇陛下の御退位と皇太子殿下の御即位が来年春に決まり、その先には東京オリンピックが控えている。
政府は今年も懸命に景気の維持を図るであろう。本来なら方向転換を図る必要がある財政政策も金融政策も基調は維持されると考えられる。
それにもかかわらず経済成長率が高まることは難しいであろう。 人々は現状に満足しているわけではないにしても、平穏な景気に慣れたためか、諦めが先に立ってしまうのかもしれない。国民に新しいことへ挑戦する意欲が乏しくなっているように思われる。
売り上げが伸びる様相がないために企業も積極的な対応をしなくなってしまった。社会全体として燃えるような情熱がなくなっては経済に活力が出てこない。
それでも高い水準を謳歌できるのであるから特別の不満はないままに推移するとの安心感があるようにも思われる。
ところが国内的には安泰であっても、今年の世界は平穏とは程遠い。それが直接的には輸出入を通じて国内経済に影響を及ぼす恐れがある。さらに心配なのは国際間の紛争によって経済活動が阻害されることである。
先進国、発展途上国を問わず、国内に深刻な問題を抱えている国が多い。政治が不安定になっており、それが他国へ矛先を向けがちになる。
世界的な紛争に対して仲介して治める国がなくなってしまった。逆に各国の自己中心主義が国際間の利害を際立たせつつある。国際社会の安定を前提とした経済活動が従来どおりにはできなくなることが恐ろしい。
その影響が直接・間接に我が国の経済にマイナスの影響を及ぼすことが懸念される。このような海外の情勢は簡単に変わらないであろう。将来にわたって大きな変動に備える必要がある。それには自己の体力を強める以外にない。個人にとっても企業にとっても国家にとっても変わることはない。
---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2018.1.1)から---