名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

 2017.11.1

景気の引上げは期待薄

    ―――財政赤字の縮小が景気悪化要因―――

 政府は懸命に景気の引上げを策してきた。

 景気振興に力を発揮するのは財政政策であり、その中身としては減税と財政支出の増加である。

 通常は税収を中心とした収入の範囲で財政支出が行われる。その限りでは、政府が民間から吸い上げた範囲で支出が行われ、景気に対して中立である。

 景気振興政策としては減税した分と支出を上乗せした分が効果を発揮する。すなわち赤字分だけ景気を引き上げる力となり、その分だけ経済水準が上昇する。

 その効果は波及するため2年や3年は経済水準を引き上げることができる。それを契機に経済が上昇軌道に乗ることが望まれる。

そうなれば景気の上昇につれて企業や国民が豊かになるだけでなく、政府は税収が増加して、当初の財政赤字が縮小する。そして場合によっては黒字になることも考えられると言われる。

ところが経済に活力がないと、そのように弾みがつかず、そこで経済水準の上昇が止まってしまう。それをさらに引き上げようとすれば、赤字幅を拡大する必要がある。もしも赤字幅を縮小すれば、それに応じて経済水準が低下する。

 現在、我が国の財政赤字は莫大な額になっており、赤字幅の何倍も国内総生産は押し上げられていると考えられる。それにもかかわらず経済の水準はほぼ横這いである。

 財政政策によって経済を成長させようとすれば、財政赤字を上乗せしなければならない。

 巨額になった赤字を増加させるとしても限界がある。すなわち財政政策による経済の成長は難しい。

 膨大になった財政赤字を縮小することが必要なのである。しかし、それが経済を縮小させることは間違いない。それだけに本格的な財政改革が先送りされてきた。

 そのような先送りが限界に来ていることを考えると、将来の経済が大きな縮小要因を抱えていることを無視することはできない。

---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2017.11.1)から---

 

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