名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

2017.9.1

金融政策の正常化による景気の悪化

    ―――目先は懸念ないが・・・・―――

 普通の国であれば、資金が乏しくて経済活動が抑えられている。そこへ資金が投入されれば、その資金が使われて購買力が上昇し、ものが売れて景気が良くなる。金利が下がり企業は資金を借りて投資をするであろう。それが景気を活性化する。

 このような筋書きを日本銀行が描いていたと思われる。金融の極端な緩和政策を物価が2パーセントになるまで続けると宣言し、簡単には止めないと確約して、景気の引上げを目論んだ。

 長年にわたり膨大な資金余剰を続けてきた我が国では、資金の価値は著しく低下している。したがって金融の力がなくなって久しい。どれほど資金を供給しても、それで経済が活性化することは考えられない。

 金融政策による本格的な景気の引き上げは失敗に終わったと言えよう。それでも政策を転換するのは容易ではない。当局の面子もあり、当分の間、金融の超緩和政策は続くであろう。

しかし、これまで膨大な資金を民間へ供給するために、巨額の国債を買上げただけではなく、大量の投資信託を買ってきた。このような「禁じ手」をいつまでも続けることはできない。いずれは異常な資金の供給を止めなければならない。そのうえ膨れ上がった異常事態を収束するために、政策を反転させる必要がある。

 景気を押し上げることができなかっただけに、その政策を止めても、あるいは反対の政策へ転換しても影響がないと思われるかもしれない。

 しかし膨大な資金供給の結果として円資金が余って円相場が下落している。投資信託の購入によって、間接的ながら膨大な株式が日銀に吸い上げられ、株価水準が上昇していると考えられる。

 円安と株高によって我が国の景気は押し上げられているのである。その要因が無くなると、景気は普通の水準へと戻るであろう。

そのうえ膨れ上がった異常な事態を正常へ戻そうと金融政策を反転させる必要がある。その場合には相当な景気の下落は避けられない。それを考えるべき時期が近付いている。

---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2017.9.1)から---

 

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