名古屋大学
客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
2017.8.1
新たな再出発を
―――困難な道を切り拓き突き進もう―――
高度経済成長は遠い昔の物語になった。その前の敗戦の状況が語られることは稀である。過酷な敗戦ですべてを失い、将来に対する希望が無くなった事態は悲惨であった。
一日、一日を生き延びるのに誰もが必死であった。多くの人が戦争で亡くなり、残された家族はどのようにして生きていったのであろうか。満足に食べる食料がなく、栄養不良で多くの人々が倒れた。
その日暮らしが続くと、将来のことを考える余裕がない。進歩がなければ、永遠に悲惨な暮らしが続くはずである。
現実の日本経済はどん底から這い上がり、急速に復興していった。
それには幸運にも世界の情勢が我が国に味方したことが大きい。アメリカとソビエトの東西対立が激化し、日本がアメリカの陣営に居たことが大きかった。
しかし、どれほど幸運に恵まれていても、国民に這い上がる気力がなければ、長い上昇を実現することはできなかったはずである。より良い将来を目指して、国民が懸命に努力し続けた成果が奇跡の経済成長であった。
最近の我が国経済は低迷を続けている。我々はそれに慣れ、現状の生活に安住しているように思われる。将来のために尽力しなければ、より良い未来を望むことはできない。
今の我々だけがぬくぬくと惰眠を貪る結果が、将来の国民にどのような社会をもたらすかを考える必要がある。向上を目指さなければ、水準を維持することすらできない。
少子高齢化が進むであろう。それだけで衰退要因である。そのうえ国家財政は破綻が予想されている。財源難から公共施設の劣化が進んでいる。日本社会の効率が低下するであろう。
現状のような手厚い社会保障が続けられないことは、誰もが知っているであろう。その準備ができているとは思われない。
将来のためを考えれば、その分だけ現在を犠牲にして努力をする必要がある。困難な道を切り開く覚悟を持たなければならない。将来の国民のために再出発することが要請されている。
---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2017.8.1)から---