国家には破産も倒産もない

                       名古屋大学  客員教授

      経済学博士  

破産しても大富豪になれる。 それはアメリカだけの話ではない。もちろん破産や倒産は悲惨である。借金が返済できなくなると、最終的に個人なら破産になり、企業なら倒産になる。それまでに刀折れ、矢尽きて破綻に追い込まれるのである。しかし膨大な借金をいつまでも背負っていく必要はない。破産によって残った債務が免除されるからである。株式会社の場合は倒産ですべてがなくなる。債務も例外ではない。そこで心機一転、新しい会社を作ればよい。個人でも同様で零から再出発ができる。その後、赫々たる成果を挙げ、大繁栄することも可能である。ところが国家には破産も倒産も許されない。それは大変なことである。国の債務は帳消しにすることができず、永遠に返済しなければならないからである。

 

膨大な国債を償還する方法としてはインフレ以外にない。 我が国は半世紀にわたり、収入以上に使い、不足する分を借金し続けてきた。ところが不都合なことは何も起きていない。大量の国債が容易に発行できるため、国は資金不足で困ることはない。この状況は当分の間、変わらないであろう。したがって、これからも毎年、莫大な赤字を続け、その赤字分だけ国債残高がさらに増えていくはずである。巨額な国債を減らすことは極めて難しい。収入を増やすために大増税を行い、支出を徹底的に削減しなければならない。それらは景気を大きく悪化させるからである。それを国民が是認できなければ、最終的には極端な悪性インフレで借金の価値を縮小させざるを得ないと考えられる。

 

将来の日本国民は悲惨である。 経済水準が低下することを忌避して、目先の自分たちの豊かさを求めて借金生活を続けているのが我々である。それが行き詰まるのは我が国の経済力が低下し、国際収支が赤字基調になった後のことであり、相当先になるであろう。しかし将来を展望すると、少子高齢化は着実に進むはずである。産業の空洞化もあって、我が国の経済力が着実に低下してきている。平穏な時代が続いた後、悲劇は急に表面化する。その時点の国民生活は悲惨である。悪性インフレによって生活水準は下がり続ける。その原因は我々が膨大な赤字財政を続けているためである。我々は将来の国と国民のことを考え、財政再建のために一大決心をする必要がある。            (みずたに けんじ)

---時局コメンタリ-162517.6.12月時局心話会への寄稿から---

 

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