弱肉強食の国際社会

                       名古屋大学  客員教授

      経済学博士  

正直なトランプ大統領 次々に出されるトランプ大統領の指令にアメリカだけではなく世界中が翻弄されている。賛同しかねる点はあるものの、多くはアメリカのために仕方がないと思われる。きれいごとでは済まなくなってきたからである。自由主義が好ましいのは強者の立場である。弱者を巻き込んで自由主義を行き渡らせるためには強者として、ある程度の犠牲を払う必要がある。その余裕がなくなってきたのがアメリカである。きれいごとでは済まされない。自国第一主義が徹底すると思われる。それが短期的な観点で主張されるため、かえって長期的にはマイナスになってアメリカへ跳ね返ることも考えられる。しかし、そのようなことを言っておれない状況になってきた。

 

圧倒的ではなくなったアメリカ 2度にわたる世界大戦の結果、それまで世界の中心であったヨーロパ経済が崩壊し、アメリカだけが生き残った。その結果アメリカは圧倒的な生産力をもとにして世界中へ輸出をして世界中の資金を独占したのである。ヨーロッパの復活と日本や韓国、台湾などの躍進、さらには中国の飛躍によってアメリカの地位は大きく変わっていった。唯一の巨大資産国アメリカが巨額の借金国へと転落した。急落の速度は一時ほどではなくなったとはいえ、依然として深刻である。もはや世界中に綺麗ごとをばら撒いている余裕はない。過去の経緯や将来の跳ね返りを考慮しているわけにはいかない。大至急でなりふり構わず大鉈を振るい大改革を断行する以外に方法はない。

 

自立する実力を 現実には紆余曲折が予想される。ある程度の妥協も行われるであろう。しかし基本は変わらないのではなかろうか。アメリカが従来と大きく変わり、頼りにできないことを前提として我が国は基本方針を見直すべきである。自立する実力を確立しなければならない。国際社会は実力が支配する弱肉強食の世界である。いずれの国も必死になって独立を維持し自国の権益を守ろうとしている。そのために各国とも国民が多大の犠牲を払っているのである。長年にわたり恵まれた国際情勢に守られてきた我が国では、甘い考え方が蔓延している。それが許されなくなってきた。国を守り支えるのは国民の義務である。外交を支える防衛力と経済力の強化を大至急で図らねばならない。 (みずたに けんじ)

 

---時局コメンタリ-1608号への寄稿(2017.2.6)から---

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