名古屋大学 客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
財政破綻が日本の最大問題
―――大至急で必要な財政改革―――2017年2月1日
17年にわたり連載を続け、最後を迎えました。長年にわたるご支援を心から御礼申し上げます。
いろいろと問題が起きているものの、日本経済は大きな落ち込みもなく、安泰に過ぎている。過大な期待を持たなくても、このままで良いと思いがちである。
ところが現在の経済は政府による極端な赤字財政によって異常に大きく押し上げられている。それが半世紀も続いているため、これからも日本経済は現在と同様に推移すると思われがちである。
確かに当分の間は可能である。それだけの膨大な経済力が我が国にあるためである。それが国際収支の大幅な黒字に表れている。
ところが経常収支の黒字は縮小して来ている。産業の空洞化に伴って、我が国の優位性が失われつつあるためである。過去に蓄積した世界一の膨大な対外純資産があるため、たとえ経常収支が赤字になっても、その資産を当てれば、当分の間は問題ない。
しかし、やがては普通の国と同様にインフレ経済に転落する。その時、致命的になるのが国の大借金である。国債の金利支払いだけで、すべての税金を使っても不足する。
金利支払いのために、さらに借金を積み重ねなければならなくなる。国が借金地獄に陥る。その咎めを将来の国民が負わなければならない。国民生活の水準は急降下を続けるであろう。
それを回避する方法は、大至急で財政改革を断行する以外にない。その中身は徹底した財政支出の削減と大増税である。
それを実行すれば、長年にわたり政府が実行してきた赤字財政による景気振興の反対になる。景気は急落する。分かっているだけに改革を先送りし続けてきた。それがもはや不可能になりつつある。
将来を見据えて、どれほど大変でも改革を断行しなければならない。改革が遅れれば、その間に国の借金が急速に増え続けるからである。その結果は将来の国民の一人一人に厳しく襲い掛かってくる。
そのことを念頭に置きながら日本経済の先行きを見つめ、各人が対応を考える要がある。
---セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLand への寄稿「経済の大きな流れ」の最終回 第204回から---