名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

 2017.2.1

    重大な人手不足の問題

      ―――サービス部門の危機―――

 失業率の低下が喜ばれている。

 本来は景気が良くなることで生じるべきである。現実には景気が思わしくないにも関わらず、人手不足が目立つようになってきた。

 いわゆる少子化の結果である。そのためにサービス部門での質の低下が起き始めている。人手を要する介護分野における問題はますます深刻になってきた。物流も人手不足で従来のように、いつでも要望に応じるわけにはいかなくなる。

 特定の業種だけではなく、あらゆる産業で、きめ細かいサービスができなくなりつつあるように思われる。それが過剰サービスの削減に止まれば良いが、必要な分野に及べば問題である。

 恐ろしいのは安全性との関連である。もちろん企業段階では最重要な課題として対応するであろう。それには高い技術水準が前提となる場合が多い。それに対応する人を養成できなくなる恐れがある。

 社会資本の保守・整備も問題である。すでに多くの橋や道路の点検が話題となっている。治山治水も重要である。

通常これらは国や地方公共団体の予算不足から論議される場合が多い。確かに将来的には予算が極端に削減されて、その影響を受けることは間違いない。

 しかし資金面でやりくりができても、技術者不足は簡単に解消することができない。熟練者が退職した後の補充が難しいことは社会のあらゆる部門で共通する。

 人手不足で転職が容易になると、人々は難しい仕事、気に入らない仕事に我慢して携わっている必要がなくなる。このような状況では仕事についての教育が難しい。本当の仕事ができるためには最低限で何年もの修練が必要である。それを受け容れることができないと、一人前の人が育てられない。

 社会全体としてサービスの量が減ってくる。サービスの質が低下する。それがあらゆる面で効率に響いてくる。

 効率的で故障がない日本製品の特色が色褪せてくる。日本の優位性が失われる。それが基本的な経済の衰退につながる。

---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2017.2.1) 経済の大きな動き」から---

 

 

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