名古屋大学  客員教授

                                   経済学博士 

 平成を慶ぶべき今年の経済

  ―――景気の上昇は難しいが――201711

 平穏な新年を迎えることができる我が国は幸せである。

 混迷しているのは隣の韓国だけではない。トランプ新大統領の言動にアメリカ人だけではなく世界が注目している。ヨーロッパでは多くの国で社会が揺れ動いている。中国の政治情勢も安定しているとは限らない。中東情勢は安定とは程遠い。資源国は価格の変動に一喜一憂を繰り返す。

 各国とも国内問題に忙殺されており、世界経済を主導する国がない。底打ちしたとしても、世界全体が力強く成長することは難しいであろう。

 安倍内閣の懸命な掛け声にも関わらず、国内の需要はなかなか盛り上がらない。先行きへの不安観から、国民には積極性がなくなっている。

 将来の生活不安から人々は財布の紐を固くしている。人手不足のため賃金が上がりそうなものであるが、企業は慎重である。最終的に売り上げが伸びないため、企業は思い切った投資に消極的である。

 今年から来年にかけて景気を上昇させ、東京オリンピック景気につなげたいと誰もが考える。ところが政策は手詰まりである。

 金融政策は無力である。異常な金余りの中では金融に力がないことは明らかである。日本銀行がどれほど資金を提供しても利用して投資する企業は少ない。どれほど金利を下げても効果がない。

 効果がある財政政策を政府も頼りにしている。消費税の引上げを2度にわたって先送りしたのは、その一環である。多額の補正予算を組んでいる。そのおかげで景気は落ち込まずに来ている。

 景気をさらに押し上げるためには、多額の財政支出を実行したいところである。ところが、すでに財政赤字が膨大な額となっており、長年の大量の赤字の結果として、国債残高が極端に大きくなっているため限界がある。その中で無理を重ねることになるとしても、大きな効果を期待することは難しい。

 今年の経済に大きな成長を望むことは難しい。たとえ成長しなくても平穏な景気に推移することを慶ぶべきではなかろうか。

---セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLand への寄稿(2017.1.1)から---

 

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