名古屋大学  客員教授

                                   経済学博士 

経済情勢は平穏な一年

  ―――結果的には大過なく―――2016121

 次々と災害に襲われる一年であった。被害にあった人は多く、経済活動にも広範な影響を及ぼした。部品の供給が止まり、広い範囲で工場が動かなくなったからである。

 それらの難関を人々の努力で何とか切り抜け、全体の経済としては深刻な問題にならずに済んできた。

 世界的にも中東などの紛争が続き、難民問題がヨーロッパ諸国に大きな課題を突き付けている。多くの国々で大きな問題を抱えながらも、世界全体としては大きな破綻が表面化することなく過ぎた。

 深刻な社会的な課題に苦しんでいる国が少なくない。長年にわたり経済拡大によって覆い隠されていた問題が表面化すると、放置できない事態になり、さりとて簡単に解決できなくて呻吟する事態となっている感じである。アメリカもトランプ現象で揺れており、それが世界の経済に影響を及ぼすであろう。

我が国も例外ではない。輸出環境が思わしくないうえ、円相場も上下に大きく動いている。政府は懸命に景気振興を図っているものの、結果としては景気を引き上げることができていない。

安倍政権は消費税の再引き上げを再度延期し、増税による景気抑制の効果をさらに先送りした。このことは目先の景気にとっては好ましい。しかし、それはマイナス面を後へ送っただけである。

政府は景気振興のために大型の補正予算を組んでいるが、その効果で景気が好転する気配はない。

日本銀行の金融政策は極端な金融緩和政策に加えて、マイナス金利を導入したものの効果は少なく、逆にマイナス面が目立ってきた。そのため日本銀行としても方針の転換を図らざるを得なくなった。

安倍政権としては成長戦略を加速したいところであるが、それに即効性を求めることは無理である。

結果として経済水準は上昇することなく。平穏に推移した。この状況に満足感を求めることはできない。しかし、冷静に考えると、国内外の厳しい状況の中をこの程度で経済が推移していることを評価するべきかもしれない。

---セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLand への寄稿(2016.12.1)から---

 

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